黒崎幸吉著 註解新約聖書 Web版使徒行伝

使徒行伝第28章

分類
6 捕囚のパウロ 21:17 - 28:31
6-3 ロマ行の航海 27:1 - 28:15
6-3-4 マルタ上陸の際の奇蹟 28:1 - 28:6

28章1節 われら(すく)はれて(のち)、この(しま)のマルタと(とな)ふるを()れり。[引照]

口語訳わたしたちが、こうして救われてからわかったが、これはマルタと呼ばれる島であった。
塚本訳救われた時、わたし達はこの島がマルタと呼ばれることを知った。
前田訳救われてから、われらはこの島がマルタと呼ばれることを知った。
新共同わたしたちが助かったとき、この島がマルタと呼ばれていることが分かった。
NIVOnce safely on shore, we found out that the island was called Malta.
註解: これは今日のマルタ島と見るを可とす、アドリヤ海のメレダ島なりとの説あれど取らず。

28章2節 土人(どじん)一方(ひとかた)ならぬ(なさけ)(われ)らに(あらは)し、()りしきる(あめ)寒氣(さむさ)とのために()()きて(われ)一同(いちどう)待遇(もてな)せり。[引照]

口語訳土地の人々は、わたしたちに並々ならぬ親切をあらわしてくれた。すなわち、降りしきる雨や寒さをしのぐために、火をたいてわたしたち一同をねぎらってくれたのである。
塚本訳土民たちはただならぬ歓待を示してくれた。降り出した雨と寒さとのために、焚火をしてわたし達を皆(そこに)迎えてくれたのである。
前田訳土民たちはなみなみならぬ歓待をしてくれた。降り出した雨と寒さとのために、火をたいてわれらすべてを迎えてくれた。
新共同島の住民は大変親切にしてくれた。降る雨と寒さをしのぐためにたき火をたいて、わたしたち一同をもてなしてくれたのである。
NIVThe islanders showed us unusual kindness. They built a fire and welcomed us all because it was raining and cold.
註解: 旅人を待遇し、苦しむ者を憐む事は人道として全世界に通ずる処である。かくしてパウロはその同国人に迫害されつつ他の到る処に異邦人に好遇された。
辞解
[土人] Barbaros 「野蛮人」とも訳される事があるけれども必ずしも悪しき意味を持たない。ギリシヤ人ロマ人より見たる異国人を意味す。

28章3節 パウロ(しば)(つか)ねて()にくべたれば、(ねつ)によりて(まむし)いでて()()につく。[引照]

口語訳そのとき、パウロはひとかかえの柴をたばねて火にくべたところ、熱気のためにまむしが出てきて、彼の手にかみついた。
塚本訳さてパウロが柴を一束かき集めて火にくべたところ、一匹の蛇が熱のために(柴の中から)出てきて、手にかみついた。
前田訳さて、パウロが柴をひとたば集めて火にくべると、蛇が熱のため出て来て彼の手にかみついた。
新共同パウロが一束の枯れ枝を集めて火にくべると、一匹の蝮が熱気のために出て来て、その手に絡みついた。
NIVPaul gathered a pile of brushwood and, as he put it on the fire, a viper, driven out by the heat, fastened itself on his hand.

28章4節 (へび)のその()(かか)りたるを土人(どじん)()(たがひ)()ふ『この(ひと)(かなら)殺人者(ひとごろし)なるべし、(うみ)より(すく)はれしも、天道(てんだう)はその()くるを(ゆる)さぬなり』[引照]

口語訳土地の人々は、この生きものがパウロの手からぶら下がっているのを見て、互に言った、「この人は、きっと人殺しに違いない。海からはのがれたが、ディケーの神様が彼を生かしてはおかないのだ」。
塚本訳土民たちはこの(恐ろしい)動物がパウロの手にぶら下がっているのを見た時、互に言った、「この人はどうしても人殺しだ。海からは(やっと)救われたが、天道様が生かしておかないのだ。」
前田訳土民たちは、生き物が手からさがっているのを見ると、互いにいった、「この人はきっと人殺しだ。海から救われたが、正義の女神は生かしておかれまい」と。
新共同住民は彼の手にぶら下がっているこの生き物を見て、互いに言った。「この人はきっと人殺しにちがいない。海では助かったが、『正義の女神』はこの人を生かしておかないのだ。」
NIVWhen the islanders saw the snake hanging from his hand, they said to each other, "This man must be a murderer; for though he escaped from the sea, Justice has not allowed him to live."
註解: パウロの囚人たる事は手錠または他の徴によりて島人に判明して居った、夫ゆえに蝮にかまれしを見て結局天罰は免れないと考えたのであった。
辞解
[手につく] 果して手を噛みしや否やにつき諸説あれど5、6節より見て然りと見ざるを得ない。然りとすれば「手に懸る」は手に噛みついて釣り下る事。
[天道] Dikē「正義の女神」と訳すべきで、処によりては宮の中に祭られて居る。その母はテミス(世界秩序)、姉妹はエイレーネー(平和)及びエウノミヤ(安寧)。

28章5節 パウロ(へび)()のなかに()(おと)して(なん)(がい)をも()けざりき。[引照]

口語訳ところがパウロは、まむしを火の中に振り落して、なんの害も被らなかった。
塚本訳ところがパウロはその動物を火の中にふるい落して、なんの害も受けなかった。
前田訳しかしパウロはその生き物を火の中にふるい落として、何の害も受けなかった。
新共同ところが、パウロはその生き物を火の中に振り落とし、何の害も受けなかった。
NIVBut Paul shook the snake off into the fire and suffered no ill effects.

28章6節 人々(ひとびと)(かれ)()()づるか、または(たちま)(たふ)()ぬるならんと(うかが)ふ。(ひさ)しく(うかが)ひたれど、(いささ)かも(がい)()けぬを()て、(おもひ)()へて、()(かみ)なりと()ふ。[引照]

口語訳彼らは、彼が間もなくはれ上がるか、あるいは、たちまち倒れて死ぬだろうと、様子をうかがっていた。しかし、長い間うかがっていても、彼の身になんの変ったことも起らないのを見て、彼らは考えを変えて、「この人は神様だ」と言い出した。
塚本訳しかし人々は、はれあがるか、たちまち死んで倒れるのを待っていた。長い間待っていたが、何も異常がおこらないのを見て、意見がかわり、彼を神様だと言い出した。
前田訳人々は、今にもはれ上がるか、たちまち死んで倒れるかと思っていた。しかし、長い間待って、何も異常がおこらないのを見て、人々は考えを変え、「彼は神だ」といい出した。
新共同体がはれ上がるか、あるいは急に倒れて死ぬだろうと、彼らはパウロの様子をうかがっていた。しかし、いつまでたっても何も起こらないのを見て、考えを変え、「この人は神様だ」と言った。
NIVThe people expected him to swell up or suddenly fall dead, but after waiting a long time and seeing nothing unusual happen to him, they changed their minds and said he was a god.
註解: 土人の軽率にして迷信的なる判断が如実に示されて居る事に注意すべし。迷信は神ならぬ者を神とする事に於て極めて軽率である。但しこの奇蹟的事実の中にパウロに対する神の特別の守護があった事を思うべきであり、これを示すのがこの記事の目的であった。パウロが凡ての場合神の守りの下にある事が使徒行伝の末尾の特徴をなす。尚マルタには現在こうした蝮が居ない事を以てこの記事の事実性を否定せんとする事は早計である。

6-3-5 ポプリオの父癒さる 28:7 - 28:10

28章7節 この(ところ)(ほとり)島司(たうし)のもてる土地(とち)あり、島司(たうし)()はポプリオといふ。()(ひと)われらを(むか)へて懇切(ねんごろ)三日(みっか)(あひだ)もてなせり。[引照]

口語訳さて、その場所の近くに、島の首長、ポプリオという人の所有地があった。彼は、そこにわたしたちを招待して、三日のあいだ親切にもてなしてくれた。
塚本訳さて、その付近に、ポプリオという島の長官が地所を持っていたが、わたし達を三日家に泊めて、丁寧にもてなしてくれた。
前田訳そのあたりに、島の頭でポプリオという人の地所があった。彼はわれらを招き、三日の間手厚くもてなした。
新共同さて、この場所の近くに、島の長官でプブリウスという人の所有地があった。彼はわたしたちを歓迎して、三日間、手厚くもてなしてくれた。
NIVThere was an estate nearby that belonged to Publius, the chief official of the island. He welcomed us to his home and for three days entertained us hospitably.
註解: これはルカの記録せし第三回の歓待である(27:3。28:2)。
辞解
[島司] prōtos は職名または官名と見るべきでマルタ島には適用せる名称である(H0、E0、ラムゼー)けれどもこれに反対なる説もある。

28章8節 ポプリオの(ちち)(ねつ)痢病(りびゃう)とに(かか)りて()()たれば、パウロその(もと)にいたり、(いの)り、かつ()()きて(いや)せり。[引照]

口語訳たまたま、ポプリオの父が赤痢をわずらい、高熱で床についていた。そこでパウロは、その人のところにはいって行って祈り、手を彼の上においていやしてやった。
塚本訳たまたまポプリオの父が熱病と下痢とに苦しんで寝ていたので、パウロは彼の所に行って祈りをし、手をのせて直した。
前田訳たまたまポプリオの父が熱と赤痢に苦しんで床についていた。パウロは彼のところに行って祈り、手を置いて直した。
新共同ときに、プブリウスの父親が熱病と下痢で床についていたので、パウロはその家に行って祈り、手を置いていやした。
NIVHis father was sick in bed, suffering from fever and dysentery. Paul went in to see him and, after prayer, placed his hands on him and healed him.
註解: パウロは病を医す賜物を与えられて居った。これを奇蹟的治癒と見る必要はない、歓待に対する感謝の心がこの治病の賜物を一層力強く働かせる事が出来た。
辞解
[熱] 複数形を用い、複雑せる性質の熱病たる事を表わす。

28章9節 この(こと)ありてより(しま)()める人々(ひとびと)みな(きた)りて(いや)されたれば、[引照]

口語訳このことがあってから、ほかに病気をしている島の人たちが、ぞくぞくとやってきて、みないやされた。
塚本訳このことがあったので、島のほかの病人たちも(パウロの所に)来てなおしてもらった。
前田訳このことがあったので、島のほかの病人たちも来て、直してもらった。
新共同このことがあったので、島のほかの病人たちもやって来て、いやしてもらった。
NIVWhen this had happened, the rest of the sick on the island came and were cured.
辞解
[礼を厚くして我らを敬い] 原語「多くの尊敬(または代価)を以て我らを敬い」で、謝礼その他の形式を以て敬意を表したものと思われる。また船出の時には難破の為に失いし必要品を与えた。

28章10節 (れい)(あつ)くして(われ)らを(うやま)ひ、また船出(ふなで)(とき)には必要(ひつえう)なる品々(しなじな)(おく)りたり。[引照]

口語訳彼らはわたしたちを非常に尊敬し、出帆の時には、必要な品々を持ってきてくれた。
塚本訳彼らはわたし達に非常な尊敬を払い、船出のときには必要な品々をくれた。
前田訳彼らはわれらを深く尊敬し、船出するときには必要な品々をくれた。
新共同それで、彼らはわたしたちに深く敬意を表し、船出のときには、わたしたちに必要な物を持って来てくれた。
NIVThey honored us in many ways and when we were ready to sail, they furnished us with the supplies we needed.
註解: この治病はルカもこれに加わり、医術的治療をも施したものであろう。「我ら」はこれを示す。当時に於ては、霊的の治療と技術的治療との限界が今日の如く明かでなかった。

6-3-6 マルタよりロマまで 28:11 - 28:15

28章11節 三月(みつき)(のち)、われらはこの(しま)冬籠(ふゆごもり)せしデオスクリの(しるし)あるアレキサンデリヤの(ふね)にて()で、[引照]

口語訳三か月たった後、わたしたちは、この島に冬ごもりをしていたデオスクリの船飾りのあるアレキサンドリヤの舟で、出帆した。
塚本訳三月の後に、わたし達はこの島で冬を越していたアレキサンドリヤの船で船出した。それには(航海者の守り神)デオスクリの船首像があった。
前田訳三か月の後、われらはこの島で冬を越していたアレクサンドリアの船で出帆した。それにはデオスクロイのしるしがあった。
新共同三か月後、わたしたちは、この島で冬を越していたアレクサンドリアの船に乗って出航した。ディオスクロイを船印とする船であった。
NIVAfter three months we put out to sea in a ship that had wintered in the island. It was an Alexandrian ship with the figurehead of the twin gods Castor and Pollux.

28章12節 シラクサにつきて三日(みっか)とまり、[引照]

口語訳そして、シラクサに寄港して三日のあいだ停泊し、
塚本訳わたし達は(シチリヤ島の)シラクサに入港して三日泊まり、
前田訳われらはシラクサに入港して三日とどまり、
新共同わたしたちは、シラクサに寄港して三日間そこに滞在し、
NIVWe put in at Syracuse and stayed there three days.
註解: 冬は航海困難であり、春三月始頃より航海の季節となる。
辞解
[デオスクリ] 双子の神の名でカストルとポルクスとの二神である。船舶及び船員の守護神として崇められて居った。この神のマークが船首を飾って居った船を意味す。シラクサはイタリーの南端の島シシリーの一港。

28章13節 此處(ここ)より(めぐ)りてレギオンにいたり、一日(いちにち)()ぎて(みなみ)(かぜ)ふき(おこ)りたれば、(われ)二日(ふつか)めにポテオリに()き、[引照]

口語訳そこから進んでレギオンに行った。それから一日おいて、南風が吹いてきたのに乗じ、ふつか目にポテオリに着いた。
塚本訳そこから(島の東海岸を)まわってレギオンに行った。(イタリヤである。)一日の後に南風が吹き出したので(北に進んで、)二日目に(港町)ポテオリに着いた。
前田訳そこからまわってレギオンに行った。一日たつと南風が吹きはじめたので、二日目にポテオリに着いた。
新共同ここから海岸沿いに進み、レギオンに着いた。一日たつと、南風が吹いて来たので、二日でプテオリに入港した。
NIVFrom there we set sail and arrived at Rhegium. The next day the south wind came up, and on the following day we reached Puteoli.
辞解
[レギオン] 今のレツギオReggio
[ポテオリ] 今のプツツオリPuzzuoli でロマ市の海港でありナポリ湾にあり(ロマより約二百二十キロあり)、帆檣林立して居った。

28章14節 此處(ここ)にて兄弟(きゃうだい)たちに()ひ、その(すすめ)によりて七日(なぬか)のあひだ(とどま)り、(しか)して(つい)にロマに()く。[引照]

口語訳そこで兄弟たちに会い、勧められるまま、彼らのところに七日間も滞在した。それからわたしたちは、ついにローマに到着した。
塚本訳そこで兄弟たちに出会い、招待されて彼らのところに七日泊まった。こうして、(ついに)ローマに、わたし達は着いた。
前田訳そこで兄弟たちに出会い、勧められて彼らのところに七日泊まった。こうしてわれらはローマに着いた。
新共同わたしたちはそこで兄弟たちを見つけ、請われるままに七日間滞在した。こうして、わたしたちはローマに着いた。
NIVThere we found some brothers who invited us to spend a week with them. And so we came to Rome.
註解: ポテオリは上記の如き港で諸国の人々の混合居住せる都市であった。従って其中に基督者も居ったのであった。如何にしてその中の基督者を見出したかは録されて居ない。パウロ一行及びその地の基督者の歓びは大きくあった。
辞解
[勤によりて] 「我ら慰められて」と読む説あれどこの場合適当ではない。七日の滞在が許されたのは百卒長の好意ある取扱によったものであろう。
[ロマ] 冠詞あり(16節にはなし)、「かの多年の宿望たりしロマ」と云う心持を示す。

28章15節 かしこの兄弟(きゃうだい)たち(われ)らの(こと)をききて、アピオポロおよびトレスタベルネまで(きた)りて(われ)らを(むか)ふ。パウロこれを()(かみ)感謝(かんしゃ)し、その(こころ)(いさ)みたり。[引照]

口語訳ところが、兄弟たちは、わたしたちのことを聞いて、アピオ・ポロおよびトレス・タベルネまで出迎えてくれた。パウロは彼らに会って、神に感謝し勇み立った。
塚本訳(ローマの)兄弟たちはわたし達のことを聞き、そこから(はるばる)アピオ・ポロやトレス・タベルネ(の町々)まで迎えに来てくれた。パウロはその人たちに会って神に感謝し、勇気づけられた。
前田訳兄弟たちはわれらのことを聞いて、ローマからアピウスの広場やトレス・タベルネまで迎えに来てくれた。パウロは彼らに会って、神に感謝し、勇気を得た。
新共同ローマからは、兄弟たちがわたしたちのことを聞き伝えて、アピイフォルムとトレス・タベルネまで迎えに来てくれた。パウロは彼らを見て、神に感謝し、勇気づけられた。
NIVThe brothers there had heard that we were coming, and they traveled as far as the Forum of Appius and the Three Taverns to meet us. At the sight of these men Paul thanked God and was encouraged.
註解: ポテオリより陸路ロマに向う。其前にパウロの到着の報ロマに伝わり、その地の基督者はロマ書を受取ってパウロの来るのを期待して居ったので、その一組は遥々アピオポロ(ロマより約六十九キロ、二十里)まで、他の一組はこれより更に四里(十六キロ)ロマに近きトレスタベルネまで出迎えた。パウロはロマ行を熱望して居ったけれども、ロマの基督者が果して彼を受納れるや否やにつき不安を持って居ったので、今この出迎を受けてパウロ一行の心は感謝と歓喜に溢れ勇気百倍した。
辞解
[アピオポロ] アピオの市場の意で有名なるアピア街道Via Appia に沿う市場。
[トレスタベルネ] 「三つの宿」の意で小邑である。基督者が二組になって迎に来たのは、ロマに在る多数の基督者の間に必ずしも組織的統一が行われて居なかった為であろう。

6-4 ロマに於けるパウロ 28:16 - 28:31
6-4-1 ロマの幽囚 28:16

28章16節 (われ)らロマに()りて(のち)、パウロは(おのれ)(まも)一人(ひとり)兵卒(へいそつ)とともに(べつ)()むことを(ゆる)さる。[引照]

口語訳わたしたちがローマに着いた後、パウロは、ひとりの番兵をつけられ、ひとりで住むことを許された。
塚本訳わたし達がローマに入った時、パウロは(家を借り)監視の一兵卒と共にひとり住まいを許されていた。
前田訳われらがローマに入ったとき、パウロは番兵つきでひとり住むことを許された。
新共同わたしたちがローマに入ったとき、パウロは番兵を一人つけられたが、自分だけで住むことを許された。
NIVWhen we got to Rome, Paul was allowed to live by himself, with a soldier to guard him.
註解: 異本に「・・・入りては百卒長は囚人らを近衛隊長に付しパウロは・・・」とあり、当時の法規に叶える記録である。パウロは百卒長より特に信頼せられまたペリクスよりの書翰に無罪の意向が記されて有る事と多くの人命を救いしことにより特別の取扱を受けた。兵卒と自分とを鎖でつないで居るのが普通の方法であるが、果して何れの程度までこれを実行したかは疑問である。要するにパウロの幽閉は至って自由なるものであったと思われる。

6-4-2 パウロ、ユダヤ人と論争す 28:17 - 28:29

28章17節 三日(みっか)すぎてパウロ、ユダヤ(びと)重立(おもだ)ちたる(もの)()(あつ)む。[引照]

口語訳三日たってから、パウロは、重立ったユダヤ人たちを招いた。みんなの者が集まったとき、彼らに言った、「兄弟たちよ、わたしは、わが国民に対しても、あるいは先祖伝来の慣例に対しても、何一つそむく行為がなかったのに、エルサレムで囚人としてローマ人たちの手に引き渡された。
塚本訳三日の後にパウロは(その地の)ユダヤ人の名士たちを呼びあつめ、集まったとき彼らに言った、「わたしは、兄弟の方々よ、(イスラエルの)民あるいは先祖の習慣に逆らうことを何一つしなかったのに、エルサレムから囚人としてローマ人の手に引き渡されました。
前田訳三日の後、パウロは在住のおもだったユダヤ人を呼び、集まったときいった、「兄弟方、わたしは何も民あるいは先祖の慣わしに反したことはしませんでしたのに囚人となり、エルサレムからローマ人の手に渡されました。
新共同三日の後、パウロはおもだったユダヤ人たちを招いた。彼らが集まって来たとき、こう言った。「兄弟たち、わたしは、民に対しても先祖の慣習に対しても、背くようなことは何一つしていないのに、エルサレムで囚人としてローマ人の手に引き渡されてしまいました。
NIVThree days later he called together the leaders of the Jews. When they had assembled, Paul said to them: "My brothers, although I have done nothing against our people or against the customs of our ancestors, I was arrested in Jerusalem and handed over to the Romans.
註解: ロマ到着匆々パウロの為さんとする処はロマに在るユダヤ人に対して自己の立場を明にする事であった。然らざればパウロのカイザルに上告せる理由が彼らに不明であるからである。パウロは囚人たりし関係上、彼らの許に往く事は不可能であったので彼らの来会を求めたのであった。
辞解
[重立ちたる者] 諸会堂の司、長老たち。

その(あつま)りたる(とき)これに()ふ『兄弟(きゃうだい)たちよ、(われ)はわが(たみ)わが先祖(せんぞ)たちの慣例(ならはし)(もと)ることを(ひと)つも()さざりしに、エルサレムより囚人(めしうど)となりて、ロマ(びと)()(わた)されたり。

註解: パウロはユダヤ人の律法及び先祖よりの伝統の尊重者であった。唯パウロの反対したのは、この律法を守る事によりて義とせられんとする事であった。

28章18節 かれら(われ)(さば)きて()(あた)ることなき(ゆゑ)に、(われ)(ゆる)さんと(おも)ひしに、[引照]

口語訳彼らはわたしを取り調べた結果、なんら死に当る罪状もないので、わたしを釈放しようと思ったのであるが、
塚本訳彼らはわたしを取り調べたが、死罪にあたるなんの罪もなかったので、赦そうと思ったのでした。
前田訳彼らはわたしを調べ、何も死罪に当たる理由がなかったので、釈放しようと思ったのでした。
新共同ローマ人はわたしを取り調べたのですが、死刑に相当する理由が何も無かったので、釈放しようと思ったのです。
NIVThey examined me and wanted to release me, because I was not guilty of any crime deserving death.

28章19節 ユダヤ(びと)さからひたれば、餘義(よぎ)なくカイザルに上訴(じゃうそ)せり。[引照]

口語訳ユダヤ人たちがこれに反対したため、わたしはやむを得ず、カイザルに上訴するに至ったのである。しかしわたしは、わが同胞を訴えようなどとしているのではない。
塚本訳しかしユダヤ人が反対したため(赦されず、)わたしは余儀なく皇帝に上訴しました。だが何もわたしの国の人を訴えようなどというのではありません。
前田訳しかしユダヤ人が反対したので、わたしはやむをえず皇帝(カイサル)に上訴しました。それはわが国人を訴えようとしてではありません。
新共同しかし、ユダヤ人たちが反対したので、わたしは皇帝に上訴せざるをえませんでした。これは、決して同胞を告発するためではありません。
NIVBut when the Jews objected, I was compelled to appeal to Caesar--not that I had any charge to bring against my own people.
註解: 千卒長ルシヤ、ペリクス等パウロの無罪を認めたけれども(23:29。25:18、19、25。26:32)一度もパウロを釈さんとせし記事がなく、またカイザルに上訴せるに至ったのはユダヤ人の為でなくフエストの為であった(25:11)。唯是等の外面的の事件の進展をその内面の原因より見れば上にパウロの述ぶる処の通りであったと言う事が出来る。

()れど()國人(くにびと)(うった)へんとせしにあらず。

註解: 唯自己の生命を救わんが為にカイザルに上訴したに過ぎなかった。▲勿論単に生命を救うためではなく、イエスの証をするための生命であるから、これを無理解なるユダヤ人に委せることはできなかったからである。

28章20節 この(ゆゑ)(われ)なんぢらに()ひ、かつ(とも)(かた)らんことを(ねが)へり、(われ)はイスラエルの(いだ)希望(のぞみ)(ため)にこの(くさり)(つな)がれたり』[引照]

口語訳こういうわけで、あなたがたに会って語り合いたいと願っていた。事実、わたしは、イスラエルのいだいている希望のゆえに、この鎖につながれているのである」。
塚本訳こんな訳で、わたしはあなた達に会って話したいと願ったのです。わたしは(神のお約束による)イスラエル人の希望のために、この鎖につながれているのですから。」
前田訳こういう訳で、わたしはあなた方にお会いしてお話するよう願ったのです。わたしはイスラエルの希望のゆえにこの鎖につながれているのです」と。
新共同だからこそ、お会いして話し合いたいと、あなたがたにお願いしたのです。イスラエルが希望していることのために、わたしはこのように鎖でつながれているのです。」
NIVFor this reason I have asked to see you and talk with you. It is because of the hope of Israel that I am bound with this chain."
註解: パウロはその祖国民ユダヤ人に対する自己の態度を明かにする事が目的であった。但し自己の囚徒たる事の理由は無いにしてもユダヤ人に誤解せらるる原因は無いではない。それは「イスラエルの望」に関する解釈であって、この差異より誤解を生じ、その為に鎖に繋がるるに至ったのであると云うのがパウロの解釈であった。

28章21節 かれら()ふ『われら(なんぢ)につきてユダヤより(ふみ)()けず、また兄弟(きゃうだい)たちの(うち)より(きた)りて(なんぢ)()からぬ(こと)()げたる(もの)も、(かた)りたる(もの)もなし。[引照]

口語訳そこで彼らは、パウロに言った、「わたしたちは、ユダヤ人たちから、あなたについて、なんの文書も受け取っていないし、また、兄弟たちの中からここにきて、あなたについて不利な報告をしたり、悪口を言ったりした者もなかった。
塚本訳すると彼らが言った、「わたし達はユダヤからあなたのことについて書面も受け取っておらず、まただれか兄弟が(ここに)来て、何かあなたについての悪口を報告したことも話したこともない。
前田訳彼らはいった、「われらはあなたについてユダヤから手紙も受けとっておらず、兄弟のだれかが来て、あなたについて何か悪いことを報告したり、うわさしたこともありません。
新共同すると、ユダヤ人たちが言った。「私どもは、あなたのことについてユダヤから何の書面も受け取ってはおりませんし、また、ここに来た兄弟のだれ一人として、あなたについて何か悪いことを報告したことも、話したこともありませんでした。
NIVThey replied, "We have not received any letters from Judea concerning you, and none of the brothers who have come from there has reported or said anything bad about you.

28章22節 ただ(われ)らは(なんぢ)(おも)ふところを()かんと(ほっ)するなり。それは()宗旨(しゅうし)(いた)(ところ)にて()(なん)せらるるを()ればなり』[引照]

口語訳わたしたちは、あなたの考えていることを、直接あなたから聞くのが、正しいことだと思っている。実は、この宗派については、いたるところで反対のあることが、わたしたちの耳にもはいっている」。
塚本訳しかし(そのイスラエル人の希望に関する)あなたの考えを、直接あなたに聞くのがよいと思う。この異端については、到る所で反対されていることがわたし達に知れているのだから。」
前田訳しかしあなたがお考えのことを、直接あなたから聞くのがよいと思います。この宗派については、至るところ反対されていることをわれらは知っていますから」と。
新共同あなたの考えておられることを、直接お聞きしたい。この分派については、至るところで反対があることを耳にしているのです。」
NIVBut we want to hear what your views are, for we know that people everywhere are talking against this sect."
註解: ロマに在るユダヤ人、殊にその重立ちたる者がパウロに就きて何も知らなかったとは思われない。殊に基督者に関する悪評が到る処に行わるる以上(22節)その首魁たちにつき聞かないはずはない。唯この場合ユダヤ人の重なる人々は、その公人としての地位より公けの報告を受けない事を理由として、全然知らない態度を取り、かくしてパウロをして充分にその主張を説明せしめんとしたものと思われる。もしパウロにつき全然知らないならば、一囚人の言を左までに重視する理由はないからである。但しエルサレムより何故パウロの上告につきて公報が来なかったかは疑問とすべき点であって、或はパウロのローマ出発の時期が晩秋であったので、パウロの到着以前に使者または書面をロマに送り得なかった為であろう。或学者は、クラウデオ帝の時ユダヤ人が追放されたので、ロマの基督者は異邦人のみとなり、其後ユダヤ人が帰還を許されてからもその間の交渉が無くな